高速無線LAN情報局

無線でFPSは悪なのか?

FPSで無線LAN 害悪論

筆者は休日にPS3でゲームをよくやります。テレビゲームはお金をかけず長く楽しめるいい遊びだと思います。
2009年末から2010年初頭にかけてはまっているのが、「コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア2」(以下CoD:MW2)というゲームです。現代戦の戦争をテーマにしているFPS(First Person Shooting)で、早い話が一人称視点で銃を撃ちまくって殺しまくるというものです。
発売1か月で、世界で1000万本以上売り上げたというものすごい人気のゲームでもあります。

「CoD:MW2」にはオフラインでストーリーを楽しむモードと、オンラインで世界中のプレイヤーと対戦するモードのふたつがあります。このゲームを長く楽しむコツは、やはりオンライン対戦を楽しむことにあります。
オフラインは演出がすごいのですが、戦っている相手は所詮コンピュータでしかありません。一方のオンラインでは、人間と戦うわけですから、決まり切った戦い方というものがありません。
いろいろ試行錯誤し、勝った負けたで一喜一憂して楽しむことができます。

そんな「CoD:MW2」のオンライン対戦ですが、インターネットの掲示板を読んでいると、よく「無線LAN環境でやるな」との書き込みを目にします。
「CoD:MW2」に限らず、僅かのタイミングがものをいうFPSのオンライン対戦では、無線LAN環境ではやってはいけないというのが一般的な意見になっているようです。

これはどういうことでしょうか。
簡単に言うと、「無線LANは遅い」からという理由のようです。また、そうした理由から、本人は気付かなくとも、オンライン対戦でほかの人に迷惑がかかることがよくあるとか何とか言われています。

確かにFPSの世界では、上手な人たちの間ではミリ秒オーダーの駆け引きがものを言うようです。
最近の東芝の液晶テレビなどは、映像を映すまでの遅延が従来より短くする「ゲームモード」なるものまであります。液晶テレビで100ミリ秒程度の遅延が起きて映像が送れるだけで、自分が敵を視認し、銃を撃つまでのタイミングがその分遅れ、撃ち負けることが増えるらしいのですが、「ゲームモード」にすることで、遅延を半分の50ミリ秒程度にすることができます。最新機種では、20ミリ秒くらいの遅延になるそうです。
これはFPSに限らず、「鉄拳」や「ストリートファイター」のような格闘系のオンライン対戦でも同様です。

オンライン対戦のゲームでは遅延はできる限り少なくした方が有利になります。
当然、液晶テレビに映す部分の遅延だけでなく、通信遅延も少なくした方がいいのです。さらには、オンライン対戦では通信ホストになることがあり、そのときに無駄な通信遅延が起こると自分だけでなく、インターネット上の他のプレイヤーにも影響を及ぼすことになってしまいます。
だから、無線LANでオンライン対戦はダメと言われているようなのです。

無線LANは本当に遅く、オンライン対戦に向いていないのでしょうか。
無線LANに関するホームページをやっている上で、どうにも見過ごせない意見もネット上に散見されるので、ここで本当に無線がダメなのか考えてみることにしましょう。

無線がダメな理由

インターネットの掲示板で、「FPSなどで無線を使うな」と言われる理由には、次のようなことが書かれています。

「とにかく無線LANは遅い」というのは根拠がよく分かりませんが、イメージで何となく主張しているんでしょう。無線LANは通信パケットを電波で飛ばすわけですから、ステーション(子機)からアクセスポイントもしくは無線ルータ(親機)までで考えると、光の速度で届きます。そこらへんは、有線LANと変わりません。
また、ステーションにしてもアクセスポイントにしても、無線LANのデータを有線LANのデータに変換(ブリッジ)してやる必要があるわけですが、せいぜい数十マイクロ秒でできてしまいます。
FPSで「数十マイクロ秒の違いが影響する」のなら別ですが、もしそんな人間がいたとしたら、神業的な反射神経の持ち主なんでしょう。
普通は、その程度は何ら影響しません。

無線LANはイーサネットと比べると様々な制約があるので、どうしても特有のオーバーヘッドがあるのですが、それによる時間的なロスは屁みたいなものです。
オーバーヘッドによって本来持つ理論値よりも通信速度が落ちるわけですが、通信速度が若干落ちたところで、インターネットに接続してオンラインゲームをするくらいなら、ほかに山ほどボトルネックがあるため、何ら気にすることはありません。

また、FPSでの無線害悪論に限らず、「無線LANは暗号を使うから遅い」というのをたまに聞きますが、一体いつの話をしているのかと耳を疑いたくなってしまいます。
暗号で無線LANが遅くなったのは10年以上前の話です。
当時は、WEPをソフトで処理していたため、その処理に時間がかかっていましたが、今ではWEPはもちろんのこと、WPAやWPA-PSKなどで使われるAESなんかも全て無線LANのチップでハード的に処理します。だから、遅いとか速いとかはほとんど関係ないのです。
だから、暗号についても関係ありません。

続いて「半二重」の話ですが、これは確かに若干関係あるかも知れませんが、実際は半二重自体が問題になるのではありません。無線LANにはもっと他の問題があるのです。

無線がダメな本当の理由

FPSなどで無線がダメだと言われる理由は、上記のようなものではありません。どう考えても、無線LANの一番の弱点である、「通信品質が環境に影響されやすい」というものだと思われます。

先にも書きましたが、無線LANの通信は半二重通信になります。
無線LANが全二重として動作して、アクセスポイントとステーションが同時に電波を送信しても、互いに電波干渉を起こすだけで、まともな通信などできません。
同じチャネルの電波を複数から同時に出しても、互いにまともに受信できないため、無線LANでは決められた端末だけが送信できるようになっています。それが半二重である理由です。

無線LANは、規格や法律でキャリアセンスという機能を持たねばなりません。このキャリアセンスという機能は、電波干渉を防ぐために、ほかに電波が出ていないことを確かめてから、自分が電波を送信するという機能です。
この機能があることにより、無線LAN機器が好き勝手に電波を送信して、衝突しまくって電波障害になるという事態を防いでいるのです。

これだけ聞くと、「なんだ、やっぱり送信に制限があるから遅くなるんじゃないか」と思われるかも知れませんが、実際はそうではありません。アクセスポイントとステーションの2台の無線LAN機器しかない、クリーンな電波環境で通信を行えば、何ら問題はないのです。
そのような環境ならば、AからBという機器にpingを打ったとして、有線LANでも無線LANでも1ミリ秒で応答が返ってくるでしょう。

本当に問題なのは、劣悪な環境で使用する無線LANなのです。
人口密集地に行けば行くほど、よその家やオフィスの無線LANの電波がじゃんじゃん飛び交っています。都会に住む人は、Windowsの「ワイヤレスネットワーク接続」などで、ウンザリするほどたくさんの2.4GHz帯のアクセスポイントが見えるのではないでしょうか。
東京では30やら50やらのアクセスポイントが見えることがざらです。

これら他のアクセスポイントは、自分が使う無線LANから見て、障害でしかありません。自分のアクセスポイントに設定した同じチャネルや近接したチャネルをよそのアクセスポイントが使っていた場合、それも当然無線で通信するわけですから、自分の機器のキャリアセンス機能が働いて、その分送信できるチャンスが減るのです。
よその無線LANで高負荷の通信が行われたとき、その影響をもろに受けることもよくあります。

そのような外乱による影響で無線LANの通信品質が大きく変わります。
隣近所に誰も住んでおらず、無線LANの電波障害となるような2.4GHz帯のノイズを発生させる機器も何もないようなところに住んでいたら、何の問題もないでしょう。
しかし、普通の場合はそういうことはあまりありません。2.4GHz帯はISMバンドといって、無線LANの他にも同じ周波数帯を使用する機器があるため、何らかの影響を受けることが多くあります。

さらなる理由

環境によって電波干渉などが起こり、無線LANの通信品質が大きく低下することはよくあります。
それは、アクセスポイントとステーション間が弱い電波でしか接続されていなかった場合、より顕著になります。

PS3にはIEEE802.11gの無線LANモジュールが内蔵していますが、PS3内蔵の無線LANはお世辞にもいいものとは言えません。
とにかく飛びがイマイチで、鉄骨の一戸建てでは1階と2階で満足な通信をすることもままなりません。PS3のステータスで電波強度を確認できますが、少し離れるとすぐにパーセンテージが低下してしまいます。
これは、無線LANモジュールの出力や、内部で使用しているアンテナなどが問題なのでしょうが、それに加えて、PS3自体をテレビ台に入れることが多いため、より一層環境が悪くなってしまうのです。

無線LANの環境が悪いと、キャリアセンスで送信できないばかりでなく、通信相手にまともに電波が届かないことがよく起こります。無線LANでは電波を受け取ったとき、相手にACKという「受信したよ」というパケットを返すのですが(有線LANでのTCPでのACKと同様です)、そのACKがないと、送信側は送信パケットが届かなかったと判断し、再送をすることになります。
無線LANのチップによって異なりますが、通常、再送は送信レートを下げながら何回か行われます。例えば、54Mbpsで3回、1段階下げて48Mbpsで3回、さらに下げて36Mbpsで4回、最後に1Mbpsで2回などという具合です。
本来ならば1回で済ませたかったものを12回も送るハメになったら、通信が遅延するのは当たり前の話です。
それで届けばまだいい方ですが、届かないなんてことも普通にあるのです。

さらに、ステーションにはアクセスポイントをスキャンする機能が備わっています。スキャンとは、他のアクセスポイントの所在を確かめる機能です。
スキャンにはアクティブスキャンとパッシブスキャンという2種類がありますが、ここではその説明は割愛します。
スキャンは、ステーションが「このアクセスポイントとは通信がイマイチだから、ほかのないかなぁ~」と探すために行われます。一定の電波強度を下回ったとき、スキャンをするステーションがほとんどです。

そのスキャンが行われると、一定時間(10秒程度)、通信がかなり遅くなります。
WindowsはOSが指令を出して定期的にスキャンを行っているのですが、絶好調なpingの最中に定期的にpingの応答時間が遅くなるのは、スキャンが行われているからです。

アクセスポイントとの電波強度が弱かったり、通信品質が悪かったりすると、ステーションはスキャンを行います。その間、通信がボロボロになるため、オンラインゲームには多大な影響を及ぼすことになるでしょう。

ここまでのまとめ

FPSなどのオンラインゲームでは、インターネット回線の品質と同様に、家庭内LANの通信品質も重要になります。家庭内LANで無線LANをヘタに使用した場合、次のようなことが原因で通信遅延が発生してしまいます。

実際どうすればいいのか

これだけ悪いことを言うと「やっぱり無線LANはダメじゃないか」と思われるかも知れません。
しかしながら、これまで説明した内容は、あくまでも無線LANの環境が悪い場合の話です。
ほとんどの場合、無線LANの環境が悪くなるのは、2.4GHz帯を利用しているのが原因です。

2.4GHz帯は、よその家、会社、ホットスポットなどのアクセスポイントがうじゃうじゃある上、BluetoothやFHを使うワイヤレス電話など、同じ周波数帯を使う無線機器も多く存在します。
さらに、電子レンジのように2.4GHz帯のノイズを出す機器も意外と多く存在します。
さらに悪いことに、2.4GHz帯は電波が障害物の回り込みをするほか、結構遠くまで飛ぶので、余計によその電波が邪魔になりやすいのです。逆に言うと、飛んで来て欲しくないよその電波が自宅まで届いたりするということです。

ならば、どうすればいいでしょうか。
答えは簡単です。5GHz帯のチャネルを使えばいいのです。

5GHz帯の電波は、2.4GHzと違って直進性が強く、回り込みしにくいため、見通しの悪いところでは2.4GHzほど飛びません。そのため、ほかで5GHz帯のアクセスポイントが使われていたとしても、その電波が飛んでくることなどほとんどありません。
それだと飛ばないように思えますが、IEEE802.11nモデルや最近のハイパワーモデルでは、5GHz帯でも普通の一戸建てくらいなら十分にカバーできます。

さらに、5GHz帯の無線LANを使っている家自体がかなり少ないのも有利な点です。
実際、2.4GHz帯のアクセスポイントはうじゃうじゃ見えますが、よその家の5GHz帯のアクセスポイントが見えることなんてほとんどないでしょう。
ISMバンドの2.4GHz帯はいろんな無線機器などと共有していますが、5GHz帯は大体無線LANくらいしか使っていません。

その上、2.4GHz帯はチャネル間が5MHzで、5GHz帯は20MHzになっています。
これは大きな、そして決定的な違いになります。

無線LANでは基本的に、チャネルを分けて使用する場合、チャネル間を少なくとも20MHz以上離さないと、別チャネルの機器同士で電波干渉を起こすことが多くなります。
2.4GHz帯では、1ch、6ch、11ch、14ch(11bのみ)を使うことがセオリーとなっているのですが、それを知らない人や、無知なSI業者が適当なチャネルにするため、1~14chまでいろんなチャネルが入り乱れています。これも2.4GHz帯に電波干渉が多いひとつの要因です。
しかし、5GHz帯ならば、否が応でも20MHz離れていますので、36ch、40ch、44ch、…と使うことになり、電波干渉が起こりにくくなっています。
(IEEE802.11の無線LANでは、1チャネルの幅が5MHzになっています。)

5GHz帯では、52~64chがW53(5.3GHz帯)、100~140chがW56(5.6GHz帯)などと呼ばれていますが、W53とW56はDFSという、無線LANが気象レーダや船舶レーダの邪魔をしないようにチャネルを自動的に変えてしまう仕組みがあります。
それについての説明は割愛しますが、それを避けるため、36~48chのW52(5.2GHz帯)を使用すればいいでしょう。最悪の場合、W56はほとんどDFSによるチャネル変更がありませんので、W56でもいいかも知れません。

5GHz帯は非常にクリーンな電波環境ですので、無線LANで使う周波数帯として迷わずにお勧めします。自分で制御のしようがない電波干渉などを避けられ、快適に使用することができるでしょう。
まともな無線LAN環境で無線通信を行えば、通信遅延が発生することもなく、オンラインゲームに何ら支障を来すことはありません。

PS3を5GHz帯の無線LANで使用する場合は、イーサネットメディアコンバータを使用すればいいでしょう。PS3とメディアコンバータは有線LANで接続し、メディアコンバータと無線ルータ間を5GHzの無線LANで通信すればいいのです。
「PS3に無線LANが内蔵されているのにもったいない」と思う人もいるかも知れませんが、PS3内蔵の無線LANは2.4GHzのみ対応ですし、第一飛びなどの性能が今ひとつだからお勧めできません。

図1

上の図はごく簡単にした接続図になります。
PS3だけをFPSのオンラインゲームに特化させるため、イーサネットメディアコンバータは5GHz帯無線LANに接続するようにしましょう。
そして、ノートPCやPSP、ニンテンドーDSなど、他の通信品質は後回しでもいい無線機器は、2.4GHz帯の無線LANに接続するようにすればいいのです。

これを実現させるには、無線ルータは5GHz帯と2.4GHz帯を同時利用できるものである必要があります。また、イーサネットメディアコンバータも5GHz帯に対応しているものでなければなりません。
無線LANがどういうつもりか分かりませんが、無線ルータには5GHz帯と2.4GHz帯を同時利用できるものが極めて少ない状況です。5GHz帯はどう考えても、2.4GHz帯に比べて利点が多いのですが、いろいろと面倒が増えるしコストも高く付くから、コンシューマは2.4GHz専用の無線ルータで混雑した2.4GHz帯を使っておけということなんでしょうか。
また、イーサネットのメディアコンバータもあまり種類がなく、5GHz対応のものとなるとさらに少なくなります。

無線ルータ、イーサネットメディアコンバータのどちらの条件も満たしているもので、セット品がNECのAtermにあります。「Aterm WR8700N(HPモデル) イーサネットコンバータセット PA-WR8700N-HP/NE」というヤツです。
2010年3月頃の発売ですが、発売当初から1万8000円弱で売られており、激安。
今現在、筆者は随分前にかったBuffaloのハイパワー同時利用の無線ルータを使っているのですが、「PA-WR8700N-HP/NE」を買ってみることにします。
下にAmazonへのアフィリエイトのリンクを張っておくので、PS3やテレビなどの無線LAN化を検討している人は見て貰えればいいでしょう。

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(2010.02.20)