高速無線LAN情報局

I-O DATA WN-APG/BBR回収・交換の真相

I-O DATAは5月11日、無線LANルータWN-APG/BBR(11a/g同時利用可能無線LANルータ)の一部ロットに不具合が発見されたと発表しました。該当製品に対しては、ルータ本体だけを交換することで対応してくれるそうなので、さっそく取り替えてもらい、何がどう変わったのか見てみました。

ちなみに、交換はI-O DATAの専用ページで行います。申し込んでから2日ほどで届きました。持ってきた運送会社の人にこれまで使っていた製品の本体のみ(アンテナやACアダプタは含まない)を渡して交換してもらいます。

◆ボルテージレギュレータの問題

不具合について報告しているページには「室内気温が上昇すると、製品使用中電源ランプが消灯し動作停止する可能性がございます。」とあります。これだけで、何らかの部品の発熱でダウンしてしまうものだと予想できますが、実際に確かめたところ、その予想で正解でした。

WN-APG/BBR

上の写真は新しいWN-APG/BBRの基板です。前回の特集で見てみた古い基板からほとんど変更がありません。基板番号も同じで、ざっと見て何が変わっているのか分かりませんが、上の写真の丸囲みの部分が違いました。
この丸囲み部分は、無線LANのRF部分を覆うシールドと、そのすぐ横にあるボルテージレギュレータの上部を鉄の板でつなげてあります。レギュレータと鉄板は接着剤で、シールドと鉄板は半田付けされています。すなわち、レギュレータの発熱を抑えるために、シールドの部分を使ってヒートシンクにしているわけです。
ハード的な変更はこれだけのように見えます。

このレギュレータは、Analog Microelectronics(AME)という会社のAME8805DEFTというヤツです。5V入力2.5V出力の三端子レギュレータです。2.5Vは無線部分のRFチップで使われている電源です。
ルータの周囲温度が高いとき、レギュレータが熱くなり過ぎるために、何らかの保護回路が働いて電源が切れてしまうのが今回の不具合の原因ではないでしょうか。こうなったのも、レギュレータ部分の基板設計に問題があるからです。1~3番ピンとは別のチップ上にある端子を大きなGNDベタに接地するなどして、もっと放熱に気を遣うべきだったのではないでしょうか。

もしレギュレータにヒートシンク的なものを追加しただけであるとすると、返品された基板が修理され、別の交換に回される恐れがあるような、ないような...

◆メーカの責任問題

WN-APG/BBRの動作周囲温度は0 ~ 35度です。35度という数字は決して高いものではありません。たとえば、この問題がもし室温40度の環境で起こるのであれば、メーカは使用環境を理由に返品や交換を突っぱねることができますが、交換している以上、保証した周囲温度内で問題が起こるのでしょう。

こんなことは普通は起こりえません。どこのメーカも製品をリリースする以上、周囲温度や静電気、ノイズなどの環境試験を行うのです。I-O DATAはWN-APG/BBRをリリースするにあたって、ちゃんと環境試験を行ったのでしょうか。温度試験は最も基本的な試験であり、OEM元の台湾メーカに任せっきりだったと思われても仕方がありません。今回の問題の責任の多くはOEM元の台湾メーカより、こいつを販売したI-O DATAにあるといっても過言ではないでしょう。

ただ、I-O DATAが何かと話題の三菱ふそうと違って、リコールするだけ良心が感じられます。2万台とかの交換が必要な場合、費用だけで相当なものでしょう。I-O DATAにとってはイタすぎる話ですが、めんどくさい交換作業を求められるユーザにとっても相当イタい話でした。

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余談ですが、この基板も左側のシールドがあるRF部のアンテナコネクタ部分が未実装で、どうみてもアンテナが繋がっていないように見えます。上の写真でいうと、左側のシールドの上のパッドに何も付いていません。右の外部アンテナ用コネクタは当然未実装ですし、左のパターンアンテナに繋がっている部分(ゼロ抵抗などのパッドがある)も未実装なので、マイクロストリップラインが途中で切れています(四角囲み部分)。
実際はどこで繋がっているのでしょうか?もちろんシールド内であるわけがないので、謎です。

また、右側のシールドの右下に、今回ヒートシンクを付けたのと同じレギュレータAME8805DEFTが実装されていますが、こちらには何も付いていません。これもなぜでしょうか?

WN-APG/BBRの基板は、結構謎が多い基板です。

追記[2004.7.7]

Atherosのリファレンス基板を元に設計した11a/g同時使用可能無線LANの基板では、このWN-APG/BBRのように2.4GHz RF部分のアンテナのパターン(アンテナコネクタ)だけとりあえず残しておき、5GHz RF側にのみ接続することが多いようです。どのようにやっているかというと、5GHz RF側にあるアンテナをデュアルバンドアンテナにし、2GHz RF部分もこちら側に接続しているようです。内層のストリップラインで繋がっているのでしょう。それで、5GHzと2.4GHzが混ざらないようにダイプレクサなどをかまして、うまいことやっているようです。簡単に図を示すと、以下のようになります。

アンテナ接続

普段はANT5-1とANT5-2に両方のRF部分が接続されています(青と緑の実線)。いざというとき(どんなときか知りませんが)、2.4GHz RF部分の上にあるアンテナまでのマイクロストリップラインを切断しているところにゼロ抵抗などをジャンパとして実装すれば(赤の点線部分が繋がると)、5GHzはANT5-1、ANT5-2に、2.4GHzはANT2-1、ANT2-2から電波を入出力することになります。

ということで、アンテナ部分の謎は解けました。

(2004.05.14)