高速無線LAN情報局

新5GHz帯と電波法関連の法改正について

新5GHz帯の概要

▼ IEEE802.11aの旧チャネル

日本で5GHz帯のIEEE802.11a規格の使用チャネルが解放されたとき、日本では34ch(5170MHz)、38ch(5190MHz)、42ch(5210MHz)、46ch(5230MHz)の4chが使用可能でした。この5.15GHz~5.25GHz帯は、日本が世界に先駆けてIEEE802.11aでの使用を認めた帯域でした。 ところが、FCCやCE(R&TTE)といった規格・規制で定められている米国や欧州各国は36ch(5180MHz)、40ch(5200MHz)、44ch(5220MHz)、48ch(5240MHz)、…といった2ch(10MHz)上にずれたチャネルを使用することになりました。

本来ならば、欧米に合わせて36, 40, 44, 48chの解放は可能であったはずです。ところが、日本国中に20か所ある気象レーダなどが使用する5.25GHz~5.35GHz(下図紫部分)と48ch(5240MHz)が大きくかぶるため、下の図の用に5240MHz~5250MHz帯をIEEE802.11aと気象レーダ波との緩衝帯という意味でガードバンド(下図灰色部分)を定め、10MHz分下にずらした日本独自のチャネルとなったわけです。
欧米も5.25GHz~5.35GHzを気象レーダなどが使用しており、条件は同じでしたが、日本は欧米諸国との摺り合わせがなかったためか、それとも意地でも気象レーダと干渉させたくなかったためか、日本だけが独自のチャネルを使うことになってしまいました。
ちなみに、図を見ると分かると思いますが、"34ch(5170MHz)"などと言っても、これはあくまで中心周波数のことであり、OFDM波形は図のようにその中心周波数から左右に広がっています。この裾の部分とぶつかっても電波干渉は発生します。

ガードバンド
欧米を無視し、日本独自のチャネルにしたのは明らかな失敗でした。日本向け仕様の無線LANの設計が必要になるなどしたからです。また、後に混乱を生むことになりました。

▼世界に合わせたチャネルへの移行

2003年、WRC-03(2003年世界無線通信会議)において5GHz帯無線LAN用の周波数帯として国際的に共通の帯域(5150~5350MHzと5470~5725MHz)が割り当てられました。これに焦ったのは日本。世界中でただ1か国、日本だけが34, 38, 42, 46chを使用していたからです。国際的な会議で決まった以上、日本はそれを無視することはできません。そこで、総務省は、WRC-03の周波数が使えるように検討に入り、専門家や無線LANメーカの意見を取り入れるなどして、法改正の準備をしました。そして、2005年の5月16日に告示を行い、電波法に関連する規則(法律)の改正を行いました。
改正の概要は次のような感じです。

周波数の変更

詳しくは後述しますが、おおよそこのような感じです。総務省は旧チャネルをなかったものとし、さっさと新チャネルへと移行させたいようです。

総務省のFAQによると、何故チャネル変更を行ったかの回答に「諸外国と整合のとれたチャネルにしたほうが、無線LAN内蔵のノートパソコンを海外で利用する場合など、ユーザの利便性が高くなるほか、規格の統一により、より安価に製品を供給できる可能性があるからです。」としていますが、これは詭弁でしょう。何故なら、無線LAN製品の登録証明機関であるTELECなどでは、海外モデルで技適や工事設計の認証を取ろうとしても認めないからです。「アメリカや一部の欧米諸国で利用されている5.47~5.725GHz、あるいは5.725~5.825GHzの電波も出せますが、日本では出しません」として申請しても絶対に通りません。
まるで消費者のために法改正を行ったように恩着せがましく書かれていますが、これは自らの失敗を隠すための論理のすり替えに他なりません。

また、チャネル変更の混乱を見越して、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、まず34, 38, 42, 46chをJ52、36, 40, 44, 48chをW52、52, 56, 60, 64chをW53をいう名称とし、無線LAN機器に対してどの周波数帯(J52/W52/W53)に対応しているのか製品に書きましょうというガイドラインを発表しました。

JEITAは単なる業界団体なので、このガイドラインに強制力はありませんが、殆どのメーカがこれに従い、新製品に対して表示を行うことでしょう。ある程度の目安にはなるとは思います。

▼ W53使用時のクセモノDFS

アクセスポイントについて、IEEE802.11aで52, 56, 60, 64ch(W53)に設定した場合、DFSという機能が働きます。欧州の規格であるCE(R&TTE)では既に採用されている機能で、気象レーダとの電波干渉を避けるため、アクセスポイントのチャネルを勝手に変更してしまう機能です。
機能の概要は次のようになります。

W53での運用に当たり、ネックになるのが、勝手にチャネル変更してしまう点と、起動後1分間何もできないことです。気象レーダは日本全国をカバーしており、強弱に程度はあれ、全国どこでもレーダ波は受信できます。そのため、W52とW53の8chを全て使ったアクセスポイントのレイアウトはまず無理と考えていいでしょう。
個人宅で1台だけ利用するのであれば、チャネルが変わろうが、1分間通信が途絶えようが、さほど影響はありませんが、業務用ではそうはいきません。
SI業者が苦労してアクセスポイントの配置とチャネルの割り振りを考えても、W53のチャネルは別チャネルに変わる恐れがあるのです。機能的に、空いているチャネルに移行するようですが、空きチャネルがなければどこか干渉してしまうチャネルに変更されてしまうこともあります。W53のチャネルは、業者泣かせのチャネルと言えるでしょう。

法律で見る新5GHz帯の詳細

2005年5月16日から新5GHz帯へと移行するよう法律が改正されたわけですが、具体的にはどのようになったのか、実際の法律を読みながら見てみましょう。

▼総務省の省令と告示

2005年5月16日(月)、国立印刷局が発行する官報の号外105号に新5GHz帯に関する総務省の省令と告示が掲載されました。発表された省令は、総務省令第92号、第93号、第94号、告示が総務省告示第580号、第581号です。これらにより、電波法に関連する法律が改正され、新5GHz帯に改められることになりました。
重要な省令、告示について、順に見ていきましょう。

▼総務省令第92号

総務省令第92号では、「電波法施行規則」が改正されました。免許を要しない無線局として、無線LAN機器のことを指す「小電力データ通信システムの無線局」の規定が次のようになりました。

電波法施行規則 (昭和二十五年十一月三十日電波監理委員会規則第十四号)
(免許を要しない無線局)
第六条
 主としてデータ伝送のために無線通信を行うもの(電気通信回線設備に接続するものを含む。)であつて、次に掲げる周波数の電波を使用し、かつ、空中線電力が〇・〇一ワット以下であるもの(以下「小電力データ通信システムの無線局」という。)

(3) 五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz、五、二四〇MHz、五、二六〇MHz、五、二八〇MHz、五、三〇〇MHz又は五、三二〇MHzの周波数(屋内において使用するものに限る。)
(4) 五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz又は五、二四〇MHzの周波数(航空機内において使用するものに限る。)

(3)が変更、(4)が追加になりました。(3)はチャネルが36, 40, 44, 48, 52, 56, 60, 64ch(W52, W53)であることを示しています。(4)は飛行機の中でW52のチャネルが使えるということです。

▼総務省令第93号

総務省令第93号では、「無線設備規則」のスプリアスに関する規定が、上記92号のように新チャネルのものに改められました。

無線設備規則 (昭和二十五年十一月三十日電波監理委員会規則第十八号)
(スプリアス発射の強度の許容値)
第七条
 小電力データ通信システムの無線局の送信設備であつて、屋内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz、五、二四〇MHz、五、二六〇MHz、五、二八〇MHz、五、三〇〇MHz若しくは五、三二〇MHzの周波数の電波を使用するもの又は航空機内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz若しくは五、二四〇MHzの周波数の電波を使用するものの給電線に供給される周波数ごとのスプリアス発射の強度の許容値は、一MHzの帯域幅における平均電力が、五、一四〇MHz未満又は五、三六〇MHzを超える周波数帯において、二・五マイクロワット以下であること。

ただ、この改正で重要なのは、本文の方ではなく、附則と呼ばれる付け足しの方です。平成17年5月16日に追加された附則は次のようになっています。

附則 (平成一七年五月一六日総務省令第九三号)
 この省令の施行の日前において、証明規則第二条第一項第十九号の三に規定する特定無線設備として法第三十八条の二第一項に規定する技術基準適合証明を受けた、又は法第三十八条の二十四第一項に規定する工事設計認証を受けた工事設計に基づく無線設備の条件は、なお従前の例によるものとする。
 この省令の施行の日から平成二十年五月三十一日までの間に限り、この省令による改正後の設備規則(以下「新規則」という。)第四十九条の二十第三号に規定する小電力データ通信システムの無線局の無線設備は、五、一七〇MHz、五、一九〇MHz、五、二一〇MHz又は五、二三〇MHzの周波数の電波を発射する機能を有することができる。ただし、これらの周波数の電波を受信することによって、当該これらの周波数の電波を自動的に選択できるものに限る。
 この省令の施行の日から平成二十年五月三十一日までの間にされた求めにより技術基準適合証明を受けた特定無線設備又は法第三十八条の二十四第一項の認証を受けた工事設計に基づく特定無線設備であって、第四十九条の二十第三号に規定する小電力データ通信システムの無線局の無線設備は、平成二十年五月三十一日後において、五、一七〇MHz、五、一九〇MHz、五、二一〇MHz又は五、二三〇MHzの周波数の電波を発射する機能を有することができる。この場合において、当該無線設備については、附則第三項ただし書の規定を準用する。

第2項は、以前に技適または工事設計の認証を受けた無線LAN機器は、以前のまま使用できるということです。

第3項は重要です。2008年5月31日までは、子局(CardBusやEthernetメディアコンバータ)の無線LAN機器はJ52も使用可能としています。ただ、その条件として、パッシブスキャンに限るとしています。パッシブスキャンとは、子局がアクセスポイントを探すために信号を送出する能動的なスキャン(アクティブスキャン)とは逆、アクセスポイントからビーコンを受けて初めてそのアクセスポイントのチャネルにできるというものです。普通に使うにはアクティブだろうがパッシブだろうがあまり変わりありませんが、子局同士のアドホック通信ができなくなります。アドホックは子局から信号を出すからです。

第5項も重要です。第3項だけの適応では、2008年5月31日以降にJ52は使えなくなりますが、第5項によると、2008年5月16日までにJ52を含めた子局であることを技適または工事設計で申請すると、以後ずっと全チャネルサポートの子局として使えるということです。特例措置ではありますが、法改正から3年の間に認証を受けた子局はJ52/W52/W53対応とすることができ、何ともお得な感じがします。
実際に、市場で販売されている殆どの子局製品はJ52/W52/W53サポートとなっています。

▼総務省令第94号

総務省令第94号は、今回の法改正で最も重要な省令です。W53についてやファームウェアの更新による旧チャネル製品の新チャネルへの移行について、「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」を改正しています。
まずは第二条第一項第十九号の三(工事設計書などに書く5GHz帯を表す19号の3の由来)を次のように変更しています。

特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則(昭和五十六年十一月二十一日郵政省令第三十七号)
第二条 法第三十八条の二第一項の特定無線設備は、次のとおりとする。 十九の三 屋内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz、五、二四〇MHz、五、二六〇MHz、五、二八〇MHz、五、三〇〇MHz若しくは五、三二〇MHzの周波数の電波を使用するもの又は航空機内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz若しくは五、二四〇MHzの周波数の電波を使用する小電力データ通信システムの無線局に使用するための無線設備

他の省令と同様に、チャネルがW52, W53のチャネルになったことを示しています。
重要なのは別表第二号第三中12に次のような文章が追加されたことです。

別表第二号 工事設計の様式(別表第一号一(1)関係)
第三 市民ラジオの無線局、コードレス電話の無線局、特定小電力無線局、小電力セキュリティシステムの無線局、小電力データ通信システムの無線局、デジタルコードレス電話の無線局、PHSの陸上移動局、5GHz帯無線アクセスシステムの陸上移動局及び狭域通信システムの陸上移動局に使用するための無線設備の工事設計書
(3) 屋内において5,260MHz、5,280MHz、5,300MHz又は5,320MHzの周波数の電波を使用する小電力データ通信システムの無線局の無線設備については、親局(他の無線局から制御を受けることなく送信を行い、通信系が使用する電波の周波数を設定をするものであつて、当該通信系内の他の無線局を制御する無線局をいう。以下同じ。)のもの又は子局(親局に制御される無線局をいう。)のものの別及び一の通信系における平均の空中線電力を3デシベル低下させる機能の有無を記載すること。

親局(アクセスポイント)と子局は、W53のチャネルではそれぞれ送信出力を3dB(50%)下げる機能がなければならないということです。いわゆるTPC(Transmit Power Control)です。普通TPCというのは、親局と子局でデータをやりとりし、できる限り小さい送信出力にして通信を行い、他への電波干渉を和らげたり、消費電力を少なくするというものです。しかし、ここではそんな細かいことは書かれておらず、3dB下げる機能さえあればいいようです。

また、総務省の担当はこの別表第二号を拡大解釈し、親局と子局は工事設計書を別にせねばならないとしています。これまで、MiniPCIなどの無線LANモジュールで技適や工事設計などの認証を取得し、アクセスポイントに内蔵したり、ノートPCにクライアントとして内蔵することが可能でしたが、今度の法改正からはそれが不可能になりました。親局にはDFSなどの機能が必要で、子局にはそれらが必要ないのですが、親局としても子局としても問題ないのであれば、その無線LANモジュールはどちらでも動かすことが可能なはずです。すなわち、ひとつの認証番号で親局、子局どちらにでもなることができるはずです。実際にFCCやCE(R&TTE)では親局、子局の区別はありません。にも関わらず、何を考えているのか理解し得ない総務省の担当官僚は、親子別の申請が必要と言うのです。国際化といってチャネルを変更したにも関わらず、こういうことで訳の分からぬ解釈をしています。一方では国際化、一方では日本だけの解釈。こんなんでいいのでしょうか。

それはさておき、省令94号ではまたも附則が追加され、旧チャネル製品の新チャネルへの変更について記述されています。

附則 (平成一七年五月一六日総務省令第九四号)
(施行期日)
 この省令は、公布の日から施行する。
(経過措置)
 この省令の施行の際現に受けているこの省令による改正前の証明規則第二条第一項第十九号の三の無線設備(以下「旧無線設備」という。)に係る技術基準適合証明又は工事設計認証(以下「技術基準適合証明等」という。)の効力は、この省令の施行後においてもなお有効とする。
 この省令の施行の日前にされた旧無線設備に係る技術基準適合証明等の求めにあって、この省令の施行の日以後に技術基準適合証明等を行う場合においては、当該無線設備に係る技術基準適合証明等の審査は、なお従前の例によるものとする。
 旧無線設備に係る技術基準適合証明等を受けた者は、プログラム(電子計算機に対する指令であって一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)を書き換えることにより当該無線設備をこの省令による改正後の証明規則第二条第一項第十九号の三の無線設備(五、一七〇MHz、五、一八〇MHz、五、一九〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二一〇MHz、五、二二〇MHz、五、二三〇MHz又は五、二四〇MHzの周波数の電波を使用する無線局に使用するものに限る。)とする変更の工事を行おうとする場合には、この省令の施行の日から平成二十年五月三十一日までの間に限り、当該技術基準適合証明等を行った登録証明機関に、次の各号に掲げる事項を記載した書類を提出して、工事設計認証を求めることができる。
一 プログラムの書換えにより変更の工事を行おうとする無線設備の技術基準適合証明番号又は工事設計認証番号
二 プログラムの書換えの方法
三 プログラムの書換えが確実になされるために講じられる措置(他の者によって容易に書き換えられないために講じられるものを含む。)の概要
四 プログラムの書換えがなされた無線設備の判別の方法
 前項の規定により書類を提出して工事設計認証を受けた者が、この省令の施行の日から平成二十三年五月三十一日までの間に限り、同項第二号の方法に基づきプログラムを書き換えることにより、旧無線設備を当該工事設計認証を受けた工事設計に合致させ、法第三十八条の二十五第二項の規定による義務を履行したときは、法第三十八条の七第一項又は法第三十八条の二十六の規定により当該無線設備に付されていた表示は、当該者が法第三十八条の七第三項の規定により除去し、かつ、法第三十八条の二十六の規定により当該工事設計に基づく無線設備について付したものとみなす。
 附則第四項の規定により書類の提出を受けて工事設計認証を行った登録証明機関は、法第三十八条の二十四第三項において準用する法第三十八条の六第二項の規定により報告をしようとするときは、証明規則第十七条第四項の報告書に同項各号に掲げる事項を記載した書類を添えて総務大臣に提出しなければならない。
 総務大臣は、前項の規定による書類が添えてなされた報告を受けた場合には、証明規則第十七条第五項に規定する事項のほか、附則第四項第一号に掲げる事項についても公示するものとする。

ごちゃごちゃとありますが、チャネル変更の条件として、総務省の見解等を含めた条件を加えると、次のようになります。

ものすごく厳しい条件です。特に、メーカがチャネル変更された機器のシリアル番号などを把握できるとは到底思えません。また、ドライバでのアップデートは不可のようです。CardBusクライアントのアップデートはどうするのでしょうか。無線チップのEEPROMデータを書き換えたりする必要がありそうです。
BuffaloやCoregaは2005年7月にチャネル変更用のファームウェアを公開するとしてましたが、4か月経ってもちっとも公開されません。きっと総務省と揉めているのでしょう。どのようになるか見ものです。

▼総務省告示第580号

総務省告示第580号では、新チャネルを使用する旨とキャリアセンス、W53でのDFSについて述べられています。DFSについて記述された第四項を見てみましょう。

総務省告示第五百八十号
無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第四十九条の二十第三号ヲの規定に基づき、小電力データ通信システムの無線局の送信設備であって、屋内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz、五、二四〇MHz、五、二六〇MHz、五、二八〇MHz、五、三〇〇MHz若しくは五、三二〇MHzの周波数の電波を使用するもの又は航空機内において五、一八〇MHz、五、二〇〇MHz、五、二二〇MHz若しくは五、二四〇MHzの周波数の電波を使用するものの無線設備の要件及びキャリアセンス等の技術的条件を次のように定め、平成十七年五月十六日から施行する。

 屋内において五、二六〇MHz、五、二八〇MHz、五、三〇〇MHz又は五、三二〇MHzの周波数の電波を使用するものの無線設備は、次に掲げる条件に適合すること。

 親局(他の無線局から制御を受けることなく送信を行い、通信系が使用するチャネルを設定するものであって、当該通信系内の他の無線局を制御する無線局をいう。以下同じ。)に制御される無線局(以下「子局」という。)の無線設備は、親局からの制御によって自動的に送信する周波数を選択し、送信を行い、送信を停止する機能を備えること。
 親局の無線設備は、次のとおりとする。
(一) 無線設備は、送信しようとしているチャネルの占有周波数帯幅内におけるレーダーが送信する電波の有無について六〇秒間の確認(以下「利用可能チャネル確認」という。)を行い、確実に当該電波を検出すること。
(二) 送信する情報の種類により送信パケットの大きさが変動するIPパケット伝送に基づく送信を行う無線設備は、次に定める通信の間、送信しているチャネルの占有周波数帯幅内におけるレーダーが送信する電波の有無について、連続的に確認(以下「運用中チャネル監視」という。)を行い、当該電波を六〇パーセント以上の確率で検出すること。親局から子局に対して、誤り訂正及び制御信号を含めない信号伝送速度で、無線設備の最大信号伝送速度の五〇パーセントの伝送を行うこと。
(三) (一)及び(二)に掲げるレーダーが送信する電波は、次のとおりであること。
(1) パルス幅、繰り返し周波数及び連続するパルスの数の組合せは、次の表のとおりであること。
パルス幅(マイクロ秒)繰り返し周波数(Hz)連続するパルスの数
七〇〇十八
二、五二六〇十八
(2) 電力は、絶対利得〇デシベルの空中線で受信する一マイクロ秒当たりの平均電力において、次のとおりであること。
A 無線設備の最大等価等方輻射電力が〇・二ワット未満の場合
(-)六二デシベル(一ミリワットを〇デシベルとする。)以上
B 無線設備の最大等価等方輻射電力が〇・二ワット以上の場合
(-)六四デシベル(一ミリワットを〇デシベルとする。)以上
(四) 無線設備は、運用を開始していない場合又は連続的に運用中チャネル監視を行っていない場合には、利用可能チャネル確認を完了することなく、いずれのチャネルも送信を行ってはならない。
(五) 無線設備は、利用可能チャネル確認又は運用中チャネル監視によりレーダーの電波が検出された場合には、当該電波が検出されたチャネルにおいて、検出してから三〇分の間、送信を行ってはならない。
(六) 無線設備は、運用中チャネル監視によりレーダーの電波が検出された場合には、当該電波が検出されたチャネルにおいて、無線設備及びそれに従属する子局の無線設備の送信を十秒以内に停止しなければならない。なお、当該期間におけるすべての無線設備の送信時間の合計は、二六〇ミリ秒以下とする。

1号では子局の定義について、2号では親局のDFSについて事細かに記述されています。TPCとはえらい違いです。その内容については、前述の通りです。

ちなみに、総務省告示581号では、平成6年郵政省告示第424号(端末設備等規則の規定に基づく識別符号の条件等を定める件)について、J52からW52、W53に変更されました。

▼法令の確認

以上で紹介した法令のうち、省令および法律に関しては、総務省のホームページや「法令データ提供システム」などで確認することができます。

▼総務省の見解に対する疑問

今回の法改正で大きな疑問点がふたつほどあります。

最初に記述した親子の申請については前述の通りです。総務省の見解は、「W53対応の無線設備の親局にはDFSとTPCが必要で、子局にはTPCが必要。よって親局と子局の条件は同時に成立しないからダメ」ということのようです。DFSとTPCの両方があれば親子の申請が同じでも、何ら不思議ではありません。むしろ、それが普通でしょう。前述しましたが、そんなことを言っている国は日本くらいです。

また、旧製品のチャネル変更については、そのハードルの高さが疑問です。総務省は旧チャネルにした失敗から、新チャネルへの移行を推進したいはずです。にも関わらず、旧製品の新チャネル対応には嫌がらせとしか思えない条件が付けられています。旧製品のユーザで新チャネルへ移行したい人がどれだけいるのかは疑問ですが、メーカはユーザから少なからず不満を受けるはずです。ところが、肝心のお上がイジワルをしてメーカを締め付けるのであれば、それは消費者を愚弄していることと言えるでしょう。
「ガタガタ言うな、新製品買えや。」
総務省はそう言いたいのかも知れません。

無線LAN機器の使用にあたっては、何かと法律でごちゃごちゃ規定されていますが、技適や工事設計の認証、つまり無線LAN製品のあり方に関して最終的な決定権があるのは総務省の担当です。法律の解釈によってグレーになるようなことでも、総務省の担当がイエスと言えばOK、ノーなら永久にNGとなります。所詮そんなもんらしいです。

以前、台湾のマザーボードメーカから、無線チップがマザーボード上に実装されている商品が販売されていました。その無線LANチップ内蔵マザーボードは、総務省の担当がダメと言ったため、今後認証を受けられないことになったそうです。無線の認証を受けられない、すなわち日本国内での販売禁止ということです。
意味不明な理由が色々出されたそうですが、まとめるとCPUが取り替えられるからだそうです。マザーボード上のCPUは、別に無線LANの根幹に関わるような操作をしていません。無線LANチップであるMAC、BB、RFのチップが重要なのであって、CPUと無線LANチップはPCIバスという信号線で繋がっているだけ、CPUはPCIで無線チップとやりとりするだけなのです。にも関わらず、マザーボード上の無線LANモジュールはNGなのだそうです。
ならば、CardBus製品も、CPUが色々変わるデスクトップやノートPCのマザーボードに接続して使うわけですから、それもNGになりそうなもんですが、CardBusは関係ないそうです。何故。一般人には理解しがたい判断を行うのが総務省なのでしょうか。

Intelは無線機能内蔵のチップセットを開発し、デスクトップマシンをアクセスポイントとして使用したり、無線LANクライアントを元々内蔵しているようなマシンとして使用できることを考えているそうですが(CentrinoはMiniPCIの無線LANモジュールを使用しているのでそれと異なります)、親局と子局の申請が別なこと、無線LAN機能内蔵のマザーボードの認証がNGであることを考えると、Intelの無線内蔵チップセット製品は日本で販売できないことになります。そんなことがあり得るのでしょうか。Intelのような大企業だけ、例外とならないことを今後監視していく必要がありそうです。

(2005.09.10)