高速無線LAN情報局

IEEE802.11nの高速化技術 (1)

実効速度100Mbpsを謳ったIEEE802.11n(ドラフト版)に対応した無線LAN製品が世に出回ってからかなりの月日が経ち、今ではノートパソコンの多くに対応無線LANモジュールが内蔵されるまでになりました。
しかしながら、どういう技術で速度が速くなったのかさっぱり分からない人が多いと思います。そんなこと知らなくても11nの利用には何ら支障がありませんが、ある程度は知っておきたいものです。
しかしながら、専門書やインターネット上の解説は技術者が書いたわけの分からない小難しいものばかりで理解するにはそれなりの知識が必要です。

そこで高速無線LAN情報局では11nの高速化技術などについて、簡略化して分かりやすく説明したいと考えています。あくまでも最低限の情報のみですので、詳しく知りたい方は専門書や規格書をどうぞ。

11nのデータレート

従来の11a/b/g規格(11nを語る場合、11a/b/gは"レガシー"な規格などと呼ばれます)では、データレートが以下のように定められていました。

無線規格データレート (Mbps)
11b
(DSSS)
1
2
5.5
11
11a/g
(OFDM)
6
9
12
18
24
36
48
54

非常に単純ですね。DSSS変調方式の4つとOFDM変調方式の8つの段階のデータレートがあります。
11nは11a/gと同様にOFDMというデジタル変調方式を使用していて、上記のデータレートにさらにデータレートが加えられています。追加されたレートを見てみましょう。

MCS Indexストリーム数データレート (Mbps)
バンド幅 20MHzバンド幅 40MHz
800ns GI400ns GI800ns GI400ns GI
016.57.213.515.0
113.014.427.030.0
219.521.740.545.0
326.028.954.060.0
439.043.381.090.0
552.057.8108.0120.0
658.565.0121.5135.0
765.072.2135.0150.0
8213.014.427.030.0
926.028.954.060.0
1039.043.381.090.0
1152.057.8108.0120.0
1278.086.7162.0180.0
13104.0115.6216.0240.0
14117.0130.0243.0270.0
15130.0144.4270.0300.0
16319.521.740.545.0
1739.043.381.090.0
1858.565.0121.5135.0
1978.086.7162.0180.0
20117.0130.0243.0270.0
21156.0173.3324.0360.0
22175.5195.0364.5405.0
23195.0216.7405.0450.0
24426.028.954.060.0
2552.057.8108.0120.0
2678.086.7162.0180.0
27104.0115.6216.0240.0
28156.0173.3324.0360.0
29208.0231.1432.0480.0
30234.0260.0486.0540.0
31260.0288.9540.0600.0

めまいがするほどたくさんあります。IEEE802.11nという規格は、様々な通信形態があり、その形態ごとにデータレートが異なるためにこのようなデータレート設定になってしまうのです。
MCS(Modulation and Coding Scheme)は単なるインデックス番号だと考えてください。11nでは0から31までの32個のインデックスがあります。
バンド幅は、使用する無線LANの電波の波形が占有する帯域の幅を指します。通常の無線LANでは20MHz程度の帯域が使用されますが、速度を向上させるために倍の40MHzを利用する技術があり、11nではそれを利用しています。
800ns GI、400ns GIはガードインターバルの長さを表します。
バンド幅、ガードインターバル、ストリーム数については、後章にて説明します。

上記の表のうち、バンド幅20MHzでガードインターバル400nsのデータレートはほとんど見る機会がないかも知れません。11n規格では、そのデータレートがオプション扱いになっており、実際にサポートしている無線チップもあまりないからです。
また、現状ではストリーム数が2までの無線LAN製品しかありませんので、ストリーム数が3または4のレートを目にする機会もないでしょう。 そのため、表のレートのうち、よく目にするのが表中に黄色く色を付けた65Mbps、130Mbps、300Mbpsだと思います。従来の54Mbpsからレートを上げるため、次のような技術や工夫が用いられています。

レートアップ

OFDMシンボルのサブキャリア数を増やしたり、符号化率を高めることで65Mbpsにすることができます。
さらにそれを2系統、すなわち2ストリームで送信することで倍になるため130Mbpsにすることができます。
その130Mbpsは、ガードインターバルを半分にし、さらにバンド幅を2倍にすることで300Mbpsにすることができます。
そのほか、フレームアグリゲーションやブロックACKという技術を用いて実効速度の向上が図られています。

これだけでは何のことかさっぱり分からないと思います。
それらについては、この後の章にてかいつまんで説明します。

「IEEE802.11nの高速化技術 (2)」に続く → 続き

(2008.12.20)