高速無線LAN情報局

無線LANでよく見かけるdBなる単位について

dBとは

無線LANなどの高周波では、電力量をあらわす単位として一般的にdB(デシベル)が用いられます。
ここでいうdBとは、電力の入出力の比を常用対数で表した単位のことをいい、入力電流をPin、出力電流をPoutとすると、その電力比G(dB)は、

G=10log10(Pout/Pin) …… (1)

となります。

dBという単位は、B(ベル)の1/10(d:デシ)ということです。dは、小学校の理科で出てくるdl(デシリットル)などのdです。(1)式では、対数なのでd(デシ)の分、10倍されています。
ちなみに、無線LANの技術屋さんは、dBを「デシベル」と読まずに「デービー」という人が多いと思います。どちらかというと、「デービー」の方が技術屋さんには一般的かも知れません。後述するdBmは「デービーエム」、dBiは「デービーアイ」などと呼ばれています。

なぜdBを使うのか

dBという単位をなぜ使うのかという疑問があると思いますが、結論からいうと、計算が簡単にでき、かつ人間に直感的に分かる単位系であるからということです。スピーカなどのアンプを例にして説明してみましょう。

A1というアンプは2倍、A2というアンプは5倍、A3というアンプは10倍の出力があるとします。このとき、A1、A2、A3を直列につないで増幅させると、

A1×A2×A3=2×5×10=100(倍) …… (2)

で100倍になって出力されます。計算は簡単ですね。では、A1が2.51倍、A2が3.55倍、A3が8.91倍であったときは、

A1×A2×A3=2.51×3.55×8.91(倍) …… (3)

になります。この計算のとき、暗算でできるでしょうか?普通の人ならまず無理かと思います。しかし、はなからdBを用いていれば、計算を簡単にすることができるのです。

アンプの出力をdBで考えたとします。dBは対数の単位ですから、(2)式や(3)式の掛け算は足し算で置き換えることができます(なぜそうなるのかを知りたい人は、高校数学の代数の教科書でも調べてください)。例えば、(2)式をdB単位にすると、A1の2倍は3dB、A2の5倍は7dB、A3の10倍は10dBとなります。このとき、(2)式は

A1+A2+A3=3+7+10=20(dB) …… (4)

となります。同様に(3)式は、

A1+A2+A3=4+11+19=34(dB) …… (5)

となります。ここでは、わざときれいなdB値になるように値を選びましたが、掛け算が足し算になるわけですから、どっちにせよ、計算はすごく楽になるのです。

また、この対数的な数値の増加は、人間の感覚に似ています。アンプの出力電力が2倍になったからといって、スピーカからの音が2倍大きく聞こえるというものではありません。ボリュームを回してちょびちょび音を大きくするのと、dBの値の増幅加減が同じなのです。

電力比とdBの関係

電力比をdBにして表したいとき、いちいち(1)式に当てはめていたのではものすごく大変です。しかし、dBにするときは、電力比とdB値の関係を少しだけ覚えておくだけで、だいたいdB表現することができます。あくまでだいたいです。無線の電力量など、他にいろいろと誤差があるので、だいたいでいいのです。

電力比とdB値の関係を下の表に示します。

電力比(Pout/PinG(dB)
10
23
34.77
78.5
1010

賢明な方はもうお分かりかと思いますが、電力比が1未満の場合はdBが負になるだけです。上の表でいうと、1/2は-3(dB)、1/3は-4.77(dB)、1/7は-8.5(dB)、1/10は-10(dB)という具合です。

先ほど、dB単位系では掛け算が足し算に…という話をしましたが、このことから、上の表の関係が分かっていれば、大体の電力比が暗算で計算できちゃいます。 例えば、電力比が4(4倍)なら、2倍×2倍すなわち3(dB)+3(dB)で6(dB)という具合です。5(5倍)なら、10倍×(1/2)倍すなわち10(dB)-3(dB)で7(dB)になります。

dBmは出力を表す単位

電力比がdBであることはこれで分かっていただけたかと思います。次に、電力比でなく、電力をdB単位系で表したdBmについて説明します。とはいっても、別にdBのときと何ら変わりはしません。単に1(mW)=0(dBm)するだけです。電力比をmW(ミリワット)単位の電力に置き換えただけです。以下のようになります。

電力(mW)G (dBm)
10
23
34.77
78.5
1010

非常に単純明快です。比率ではなく電力の単位ですから、アクセスポイントなどの電波の強さは、このdBmを使って表現されます。アクセスポイントのデータシートには、「送信電力:30mW(15dBm)」とかそんな感じで書かれているはずです。

また、データシートには「受信感度:△Mbps時-○dBm」とか書かれているかも知れません。これは、「△Mbpsで通信しているとき、-○dBmですよ」ということです。そのまますぎて説明になっていませんが。例えば、-10dBmとなっていた場合、「0.1mWまで感知しますよ」ということです。

dBiはアンテナ利得

アクセスポイントや無線LANカードの仕様のところに、アンテナ利得というのが書いてあると思います。このアンテナ利得の単位にはdBiというのが使われています。dBiというアンテナ利得の単位は、電波を全ての方向に同一強度で放射する指向性が球状の理論的な仮想アンテナであるアイソトロピックアンテナ(Isotropic Antenna:完全無指向性アンテナ)を基準にして得られる「絶対利得」という数値に付けられる単位です。つまり、アイソトロピックアンテナを0dBiとする単位のことです。指向性が強くなるにつれ、アンテナ利得が増します。

これと似たようなものに、dBdというのがあります。これは、アイソトロピックアンテナの代わりに半波長ダイポールアンテナを基準にして得られる「相対利得」という数値に付けられる単位です。0dBd=2.14dBiという関係がありますが、dBdの方はほとんど使われませんので、忘れてもいいでしょう。

伝搬方程式

無線LANの通信システムを設計するには、送信側のアンテナから送信される電力に対し、受信側のアンテナで受信する電力がどれほどのものかを考えなければなりません。むずかしい理論がごちゃごちゃとあるわけですが、結論として、その関係を方程式で表すと、以下のようになります。Pr:受信電力(dBm)、Pt:送信電力(dBm)、Lp:伝搬損失(dB)、Gt:送信アンテナ利得(dBi)、Gr:受信アンテナ利得(dBi)とします。

Pr=Pt-Lp+Gt+Gr …… (6)

(6)式は、各項の単位が全てdB単位系ですから混ぜて計算できるので、足し算と引き算だけでPrを求めることができます。誰でもできるくらい簡単です。

ここで、伝搬損失Lpについて説明しましょう。電波は、自由空間(周りに電波の進行を妨げるものが無い空間)で距離の二乗に比例して減衰し、かつ電波の波長の二乗に反比例するという特性を持ちます。自由空間での伝搬損失Lを式に表すと、

L=10log10(4πd/λ)2-(10log10Gt+10log10Gr) …… (7)

になります。いちいちアンテナ利得を考慮するのは邪魔くさいので、簡単のために利得0dBiのアイソトロピックアンテナで考えると、(7)式は、

LB=10log10(4πd/λ)2=20log10(4πd/λ)=20log10(4πdf/3×108) …… (8)

とすることができます。ここで、LBは自由空間基本伝搬損失、fを周波数(Hz)とします。

(6)式の伝搬方程式では、単純にLp=LBとすればいいと思うのですが、そうはいかないようです。実際の地球上では、見通しで何もなくてもかなり電波が減衰するようで、伝搬損失Lpは近似式Loで表現するのがいいとかいわれています。しかしながら、Loは使用する周波数帯や環境によって違ってきますので、一概にはいえません。
無線LANシステムの構築などでは、まぁそれほど厳密でなくてもいいと思いますので、とりあえずここは(6)式に自由空間基本伝搬損失LBを用いて

Pr=Pt-LB+Gt+Gr …… (9)

と伝搬方程式を表すことにしましょう。

(9)式をもとにしてPrを求める例をあげます。送信電力Ptを10dBm、送信アンテナ利得Grと受信アンテナ利得Grをともに2.14dBiとします。このとき、送信側のアクセスポイントから受信側のクライアントまでの自由空間基本伝搬損失LBが74dBmだったとします。このとき、(9)式から受信電力を計算すると、

Pr=10-74+2.14+2.14≒-60(dBm)

アホみたいな計算です。-60dBmという値が受信側のクライアントの最低受信電力に達しているか確認し、足りてるようであれば受信できるということです。

さて、ここまで少し覚えておけば、それなりに無線LANシステムの活用に役に立つのではないでしょうか。まぁ、いくら計算しても、実際に設置して電波が届かないとか、強すぎて干渉するとかはあるみたいで、あくまでも参考的な知識になるのですが...。

(2003.05.30)